※本記事は、川村文化芸術振興財団に提出された報告書をもとに、原稿整理、短縮などの編集、再構成を行ったものです。
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マダン:民衆が共謀する広場プロジェクト名:マダン:民衆が共謀する広場申請者:マダン劇プロジェクト
マダン劇プロジェクトは、日韓朝のアーティスト、キュレーター、地域コミュニティーが協働してマダン劇に関するワークショップ、パフォーマンス試作、トークイベントを行うことで、現代社会におけるマダン劇の実践的価値を探求する(マダンとは、韓国・朝鮮語で地域社会の共同広場という意味)。
日本におけるマダン劇は、1980年代以降、多くの在日韓国・朝鮮人がともに暮らす町、京都市東九条の祭りである「東九条マダン」を含む在日コミュニティーの間でさまざまなかたちで上演が行われるなど、コミュニティー、多文化共生、地域問題に取り組んできた。しかし、そうしたマダン劇の芸術実践的および歴史的価値についてはあまり検討が行われてこなかった。
本プロジェクトでは、主に京都におけるマダン劇の精神および表現形式をリサーチするとともに、ワークショップおよびパフォーマンス試作を中心とする協働の場を開くことで、日韓の間で民衆の在り方を描いてきたマダン劇の現代的意味を新たに提示する。 -
オープンスタジオ/3.11後の復興に関する資料ライブラリープロジェクト名:オープンスタジオ/3.11後の復興に関する資料ライブラリー申請者:志賀理江子
2021年から宮城県美里町にある、パチンコ店を改造した私の制作スタジオ(スタジオ・パーラー)にて、「DOMING NOTHING BUT STUDIO OPEN」と名付けたオープンスタジオを定期的に開催してきました。そのなかで、訪れた人たちの想像力のインスピレーションになり、表現の場にもなるように、ゲストを迎えてのワークショップやトーク、レクチャーなども開催しました。
また、私自身が東日本大震災以後の12年間の「復興」の内実に多大な影響を受けて制作に取り組んでいる経緯もあったために、「3.11後の復興」に関係するさまざまな作品、映像資料などを閲覧できるように「3.11後の復興に関する資料ライブラリー」と名付けたコーナーを作って、2023年4月から6月にかけて展示をしました。
私は、その内実を知り、それらがなぜ行われたのかを知り、今後をどう工夫して生きていくのかを、身近な人たちとともに考えて試行錯誤していきたいと、切実に願っていました。そのためには、復興計画の資料だけではなく、そもそも近代以降「東北」と呼ばれたこの土地に何が行われてきたのかを知ること、政治の働きや、人間の存在・社会と自然の関係など、さまざまな視点や立場から考えることがとても大切だと思いました。自分たちとはどんな存在なのか、という視点に向き合うように言葉や写真、映像や関連資料、木や骨などの実物などが互いに影響し合って観る人へ問いかけるような配置を工夫しました。
自身の制作場所を開き、さまざまな取り組みを企画し、表現や交流の場にする、というオープンスタジオの活動にはとてもユニークな展開が望める可能性を非常に感じています。2023年10月に、宮城県美里町から、沿岸部、石巻市の市街地にスタジオを移転したいま、このオープンスタジオのユニークな展開をさらに深めたかたちで試みたいと思っています。
それぞれの活動の写真・映像記録はインターネット上で公開したいと思います。 -
ネガティブな想像上の家族からポジティブな家族像を生み出すためにプロジェクト名:ネガティブな想像上の家族からポジティブな家族像を生み出すために申請者:寺田健人
本プロジェクトは、日本社会で共有されてきた規範的な家族像を見つめ直し、クィアの視点から新しい家族イメージの可能性を考えるための芸術実践である。申請者はこれまで、存在しない家族との関係を想定して撮影するセルフポートレート作品《想像上の妻と娘にケーキを買って帰る》を制作し、家族という制度がどのように社会の中で形づくられているのかを問い直してきた。
近年、日本ではパートナーシップ制度の導入などを背景に、性的マイノリティーをめぐる社会的理解が進みつつあると語られることが増えている。しかし一方で、家族や職場などの日常生活の場面では、依然として異性愛を前提とした価値観が強く残っており、自身のセクシュアリティを公にできないまま生活している人も少なくない。その結果として、クィアの人びとが異性愛者として振る舞う、いわゆる「ノンケの振り」を行いながら生活している状況も見られる。
本プロジェクトでは、このような状況に着目し、クィアの人びとがどのように社会の中で異性愛者として振る舞ってきたのか、またどのような関係性を求めているのかについて、聞き取りを通して記録を行った。具体的には、申請者の周囲にいるクィアの友人たちに話を聞き、その語りとともに写真撮影を行い、オーラルヒストリーと写真表現を組み合わせた形で制作を進めた。
制度としては多様性が語られるようになった現在においても、個人の生活のレベルではカミングアウトが難しい状況が存在している。本プロジェクトは、そうした社会の状況と当事者の生活とのあいだにあるズレに目を向けながら、クィアの人びとの経験を記録し、想像上の家族というテーマを手がかりに現代の家族のあり方を考える試みである。 -
ドキュ・アッタン シアター──ミャンマーのクリエイターたちとともに「声」をあげる/届けるプロジェクトプロジェクト名:ドキュ・アッタン シアター──ミャンマーのクリエイターたちとともに「声」をあげる/届けるプロジェクト申請者:Docu Athan ドキュ・アッタン
Docu Athan(ドキュ・アッタン)は、2021年にミャンマーで起こったクーデター以降、さまざまな困難を抱えている同地のクリエイターたちと協同し、映像を中心とした芸術・文化的実践を介し、ネットワークを築くことを目的として活動する団体/プロジェクトである。この団体/プロジェクトは2023年の2月に、ミャンマーで拘束された経験を持つ、ジャーナリストの北角裕樹と映像作家の久保田徹を中心として開始した。「アッタン」はビルマ語で「声・意見」を意味する。活動の中心は、プロジェクトのウェブサイトにて、ミャンマーのクリエイターたちによって制作された映像作品を、翻訳・紹介・発信し、それらを通じたクリエイターたちの芸術・文化的な活動の支援を募ることである。映像をはじめとしながら、さまざまなアートの実践を介して「声をあげる/届ける」ことを目的としている。
「ドキュ・アッタン シアター──ミャンマーのクリエイターたちとともに『声』をあげる/届けるプロジェクト」は、そうしたこれまでのドキュ・アッタンの取り組みを背景・経緯としたオンライン上の活動の継続と、それらを基盤としてタイ、日本国内で新しいネットワークを構築する上映会型のイベントを行うものである。
プロジェクト全体の運営・実施の主体は、発起人である北角、久保田をはじめとし、キュレーターとして活動している居原田遥や協力者10人程度から成り立つ。