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本記事は、川村文化芸術振興財団に提出された報告書をもとに、原稿整理、短縮などの編集、再構成を行ったものです。

ハイヒール・プロジェクト

【申請プロジェクト名】
ハイヒール・プロジェクト

【申請者名】
片山真理

【助成金】 40万円


【概要】
──ハイヒールが特別なものではない、
ただの、あなたにとって大切な、選択の一つになってほしい。
ハイヒール・プロジェクトとは、アーティスト片山真理が、ハイヒールを履ける義足を製作し、街を歩き、ステージに立つまでを目指し2011年にスタートしたプロジェクト。2022年より本格的に始動する第2弾では次のフェイズへと進み、様々な他者とつながり、対話することを通じて、あらゆる人に与えられるべき選択の自由、福祉、そして身体そのものの可能性について問い、全ての人の「理想を抱く自由」に向けて動き出す。
今回は新たにイタリアのラグジュアリーシューズブランド、Sergio Rossi(セルジオ ロッシ)をハイヒール開発するパートナーに、ダイバーシティ&インクルージョン、サステナビリティ、ワーク&ライフを主軸に社会課題の啓発や国内外の最新事例を紹介するVOGUE CHANGEをメディアコラボレーターに迎えた。また、ナブテスコ株式会社と協賛契約を締結し、電子制御義足「ALLUX2」をプロジェクトに対し提供を受けた。


【開催/実施/発表】

© Mari Katayama

●ハイヒールの製作

ハイヒールの開発は、2022年4月から7月にかけて実施された。4月にデザインを担当するセルジオ ロッシのイタリア・チームとオンラインで打合せを実施。その後、プロトタイプの試着を5月と7月に2回実施。「田沢製作所」の義肢装具士である田澤英二氏の助言をもとに、片山自身の歩行のスタイルに合わせた修正が行われた。7月には片山が渡欧し、イタリアにあるセルジオ ロッシのファクトリーを訪問し、デザイナーや職人など、ハイヒールの開発を担った人々と交流し、意見を交わした。また、完成したハイヒールを履き、ファクトリーを舞台とした写真作品の撮影も行った。

セルジオ ロッシとのデザインに関するミーティング
●リサーチ、情報発信
◯VOGUE
ウェブ版『VOGUE』に記事を連載。全6回の記事ではまず、プロジェクトの進捗をレポート。再始動に際しての片山自身へのインタビューに始まり、セルジオ ロッシとのミーティングや試着などのプロセスが伝えられた。合わせて、プロジェクトのテーマと呼応する専門家との対談も行われ、スポーツ用義足の開発者であるエンジニアの遠藤謙氏、障害や身体を研究する美学者の伊藤亜紗氏との対談が実現した。
この連載記事は、プロジェクトの進捗を伝えるだけでなく、「義足でハイヒールを履く」という選択をするときに直面する福祉制度の問題をはじめとする社会の課題にも言及しており、アート、ファッション、福祉の領域を横断する本プロジェクトの意義を伝えるものとなった。

◯ナブテスコ
本プロジェクトでは、ハイヒールでの歩行も含む、自身の生活や制作活動に適した義足を探すことも重要な課題のひとつであった。その中で、片山はナブテスコ株式会社が開発した電子制御義足「ALLUX2」に出会い、協賛契約の締結に至った。「ALLUX2」をプロジェクトのために提供いただいたほか、ナブテスコのウェブサイト内に特設サイトを開設。「ALLUX2」を開発・生産している兵庫県を訪問し、開発者の方々と対話した。この特設サイトでは、ハイヒールだけではない様々なシューズを見につけたファッションシュートを撮影し、「ハイヒールだけじゃない選択」を示すことを試みた。

片山真理とナブテスコによる特設サイトのバナー
●作品制作
プロジェクトの過程で、複数の作品を制作。まず、プロジェクトの資金調達のためのスペシャル・エディション作品を制作・販売した。そのほか、新作の制作にも取り組んだ。セルジオ ロッシのファクトリー訪問時にセルフポートレイト作品等の撮影を行ったほか、2022年12月にもイタリアの店舗で撮影を実施。また、ナブテスコとの協賛契約の調印式での撮影も実施した。


【成果】

当初計画していた以上の支援者や協力者に恵まれ、プロジェクトが目指していた「様々な他者とつながり、対話する」ということ、そして、それを通じて、「あらゆる人に与えられるべき選択の自由、福祉、そして身体そのものの可能性について問いを投げかける」ということについては、まず最初の一歩を踏み出すことができた。

2023年度以降は、完成したハイヒールを履いて、多くの人々の前に立ち、語り合うことで、「選択の自由」について更に広く伝えていくことに力を入れる予定。具体的には、セルジオ ロッシからのワールド・リリースが予定されているほか、ナブテスコ株式会社とのコラボレーションについても継続される。ハイヒールを履いて各地を回り、「選択の自由」について伝えていくトークショーは、2023年度以降の開催を目指して準備中。プロジェクトの過程で制作した写真作品の展覧会も計画している。

© Mari Katayama
【プロジェクトデータ】
アーティスト:片山真理 スタジオ・マネージャー:中一恵 プロジェクト・マネージャー:西田祥子 協力者:セルジオ ロッシ、VOGUE CHANGE、スーパームーン・ピクチャーズ、ナブテスコ株式会社


【関連サイト】
「片山真理のハイヒール・プロジェクト Vol.1」(VOGUE JAPAN)