archive 2022年度アーカイブ

本記事は、川村文化芸術振興財団に提出された報告書をもとに、原稿整理、短縮などの編集、再構成を行ったものです。

循環系コミュニティー立ち上げプロジェクト

【申請プロジェクト名】
循環系コミュニティー立ち上げプロジェクト

【申請者名】
遠足プロジェクト実行委員会

【助成金】 40万円


【概要】
「遠足プロジェクト」という、東日本大震災の支援物資であったランドセルを世界中のアーティストが作品化し、巡回を通じて参加者と「共に背負い」、当事者として自分たちの言葉で語り合うことで震災伝承していくプロジェクトを続けてきた。今回は、過去10年間で被災地と未災地の境界を越え、遠足プロジェクトの継続で培われた国際ネットワークを、宮城県石巻市の地域社会へソーシャリー・エンゲイジド・アート・SEAの実践を通じて還元し、地域社会と有機的に協働する「循環系コミュニティー」を整備する。その後、このコミュニティーは、DAIS石巻(Diversity Art Interactive Studio)と命名された。


【開催/実施/発表】

●ちょどフェス|2022年7月3日、2023年4月23日

〈会場〉DAIS石巻(宮城県石巻市)

「循環系コミュニティー⽴ち上げプロジェクト」の⼀環として、「ちょどフェス」という「ちっともじっとしていられないんです」という地元の⾔葉で多⽂化共⽣のローカルフェスティバルを⽴ち上げ、企画、運営、参加などすべてを市⺠の⾃主的参加で開催した。1年⽬はコロナ禍のため全く広報しなかったにもかかわらず150⼈近くの来場者があり、2年⽬は400⼈以上の参加があった。その後も2026年現在まで毎年開催されながら継続している。

「ちょどフェス2023」参加者による記念写真

●DAISファーム|2022年4月〜
地域の人たち(近隣住民、障害を持った子供達とその家族、市内の外国人住民)と10年以上放置されていた雑草の⽣い茂る耕作放棄地にご近所さんの協⼒もあり、じゃがいも、かぼちゃ、なす、さつまいも、南蛮、ブロッコリー、サニーレタスなどを毎年栽培することで再生させる試みである。
DAISファームに参加した方々の集合写真


【成果】

「ちょどフェス2023」のフライヤー
「ちょどフェス」では、外国⼈コミュニティー、障害者コミュニティー、県外からのパフォーマンスアーティスト、地元住⺠など、ふだんにはない新しい出会いと協働があった。そこには、「がんばる」「周りに合わせる」「⽬標を達成する」などの⾔葉は⾒当たらず、楽しいことを「新しい⼈たちといっしょにやったら楽しかった」「もっとやりたい」という声を聞くことができた。

また、ベトナム⼈技能実習⽣たちのバインミー販売があり、鑑賞した地元の⼈たちもまた、外国⼈や地元以外からやってきた⼈たちに対して、先⼊観なく、新しい⽂化を学ぼうという意欲を⾒せ始めたことが⾒て取れた。さらに、芸術祭で⾒られがちな「アーティストは特別な能⼒を持った⼈たち」ではなく、多様なコミュニティーと⽔平なコミュニケーション──グループパフォーマンスなど──がとれたことも⼤きな成果である。
「ちょどフェス」に参加したベトナム人コミュニティーの方々
そして、年間を通じてミャンマー⼈技能実習⽣たちはDAIS⽯巻の常連となり、いちご狩り、⼲し柿づくり、焼き芋、畑開墾、クリスマス会、寿司ワークショップなどに参加し、さらには、伝統⾐装を纏った彼⼥たちが⾃分たちの国の踊りを練習して披露してくれた。普段の職場と家の往復が、少しずつ変わり始めているように⾒受けられた。また、次年度からは、参加者の自律的な活動につながる「DAISファーム」を始動させ、複合的に事業を継続して展開したい。
今後も、「無理なく有機的に」「来たい⼈が来て、やりたいことを⾃由にする」「たまたま出会った⼈と何かを始める」という「ゆっくりとした」プロセスを⼤事にして継続、循環してゆくだろう。


【関連サイト】
遠足プロジェクトのウェブサイト

遠足プロジェクトの活動は、コロナ禍を通じてDAIS石巻の活動に移行しつつあります。
DAIS石巻のウェブサイト