archive 2020年度アーカイブ

本記事は、川村文化芸術振興財団に提出された報告書をもとに、原稿整理、短縮などの編集、再構成を行ったものです。

The Clothesline

【申請プロジェクト名】
The Clothesline

【申請者名】
Our Clothesline with Mónica Mayer

【助成金】 50万円


【概要】
《The Clothesline》は、1978年にメキシコのフェミニスト・アーティスト、モニカ・メイヤーによって発表されたアート作品である。参加者が小さな質問用紙に回答し、会場に設置されている物干しロープにそれを吊るすことができる参加型アートであるとともに、それらにまつわる社会的/個人的な意識変化や、その土地や時代では重要視されてこなかった問題点を可視化させるソーシャリー・エンゲイジド・アートである。
モニカ・メイヤーはこの作品を通じてハラスメントや排除、差別の経験、性暴力などさまざまな社会的問題、特に女性における暴力や差別について問いかけている。日本では2019年愛知県で開催されたあいちトリエンナーレ2019(以下、トリエンナーレ)に初めて展示されその後、日本各地で開催されている。Our Clothesline with Mónica Mayerはモニカ・メイヤーの作品 《The Clothesline》を日本で展開するサポートを行っている団体である。


【開催/実施/発表】

●El tendedero /The Clothesline with WomEnpowered International - WE Int.


2020年7月31日(金)18時30分〜20時30分

〈参加人数〉約30人

〈会場〉オンライン(Zoom)(主催:WomEnpowered International*)


*……WomEnpowered International(ウィメンパワード・インターナショナル)は、日本における女性のエンパワーメントとジェンダー平等実現に向けてさまざまな活動をしている。

WomEnpowered Internationalのウェブサイトより

●The Clothesline with mimosas


2020年10月2日(金)10時〜22時

〈参加人数〉約100人

〈会場〉IWAI OMOTESANDO(東京・神宮前)(主催:mimosas*)


*……mimosasは、弁護士や臨床心理士などの専門家たちとともに、性被害についての「必要な正しい情報」を発信している。

WomEnpowered Internationalのウェブサイトより

●The Clothesline in Kariya


2021年1月19日(月)〜24日(日)

〈参加人数〉約290人

〈会場〉 刈谷市総合文化センターアイリス 展示室A、B、C(愛知)(主催:刈谷市、刈谷市教育委員会、刈谷市総合文化センター(KCSN共同事業体))



●YouTubeでの動画配信


動画数……21本

〈インタビュー人数〉10人

「Our Clothesline with Mónica Mayer」によるYouTube上のウェブサイトより

●フラワーデモと国際女性デーのワークショップ


2021年3月7日(日)〜8日(月)

〈会場〉松本駅前(⻑野・松本)、久屋大通公園 希望の泉前(名古屋)、オンライン(主催:フラワーデモ松本、フラワーデモ名古屋、ほか)

フラワーデモ名古屋での集合写真(2021年2月)

【成果】

●El tendedero /The Clothesline with WomEnpowered International - WE Int.オンラインでワークショップを開催し、モニカ・メイヤーのレクチャーや、Our Clotheslineメンバーの日本での《The Clothesline》の展開についてのレクチャー、また参加者それぞれの感じたハラスメントや性暴力についての対話が行われた。

●The Clothesline with mimosas
トリエンナーレや上智大学での《The Clothesline》とは異なり、性暴力を受けた被害者へのエンパワーメントをテーマとし、質問を一つだけ「セクハラ・性暴力を受けた自分(または家族や知人)にどんな言葉をかけたいですか?」に絞った。回答の一例=「あなたは一人じゃないよ。だから一人で抱えないで。悲しまないで。世界中に味方はたくさんいるから」。また、「わたしとあなたを愛すること」イベントとしてトークも開催され、参加者は100人を超えた。回答の数が少ない展示初旬においても来場者の多くに涙を流したり、深く感じ入って⻑い時間読んでいたりする姿がみられた。また、来場者や参加者への「展示による加害性」も浮き彫りになった。性暴力や性被害の記述がある場合、トラウマに触れたりPTSDやフラッシュバックを引き起こしたりしてしまう可能性があることに留意する必要があると感じられた。
「The Clothesline with mimosas」の展示風景

●The Clothesline in Kariya

2020年11月、に刈谷市にて日本女性会議が開催され、市内での女性活躍やジェンダー平等に向けた取り組みに対しての市⺠の意識、意欲は高まっていた。

この回の「The Clothesline」を開催するにあたりモニカ・メイヤーから、「今回の《The Clothesline》は新型コロナ」という提案があった。そこで10月よりオンラインワークショップを開催し、新型コロナの影響で新たに浮かび上がったり、もともとあった性差別がこの状況によって露呈されたりという問題を掬い上げる、新しい質問を作り上げた。問題を洗い出す作業は思いのほか難航し、ワークショップは計5回開催され、延べ6時間以上議論された。

開催に先立ちオンラインで回答を募集し、11月に日本女性会議においても連携を依頼。また、YouTubeでのインタビューや紹介動画の制作・配信、さらに在日メキシコ大使館やジャーナリストの津田大介氏が主宰するポリタスTVとも協力し、オンラインでのPR展開を行った。

●YouTubeでの動画配信
トリエンナーレでの活動を通して、『The Clothesline』の周知、《The Clothesline》の再展示の必要性を感じていた我々は、新型コロナのまん延防止等重点措置、緊急事態措置の下での活動を鑑み、オンラインでの活動を中心に行った。YouTubeチャンネルを開設し、『The Clothesline』についての説明動画を、《The Clothesline》の体験を共有するために関わってくれた方々へのインタビュー動画を制作・配信した。最初にモニカ・メイヤーに『The Clothesline』の説明と日本での展開について、またフェミニズムやフェミニスト・アートについて語ってもらった。また、トリエンナーレで展示再開のアクションとして行われた「Re:Freedom_Aichi」のプロジェクト、「Y/Our Freedom」で『The Clothesline』のコンセプトを用い、「Our Clothesline」メンバーとともに扉の前でファシリテーションを行った、アーティストユニットのキュンチョメにインタビューを行った。上智大学で開催された「The Clothesline」は、明日少女隊とのエンパワーメントマーチ、在日メキシコ大使館とのワークショップなど、いろいろなイベントと並行して開催された。
●国際女性デーとフラワーデモ
2019年4月に始まった性暴力の根絶を目指す「フラワーデモ」にて、2019年7月より「The Clothesline」を開催してきた。フラワーデモは2019年3月に立て続けに起こった性暴力裁判の無罪判決に抗議することで始まった。その後、47都道府県へと広がり2021年3月も続いている。デモのかたちを取りながらも、そのテーマや方法論は『The Clothesline』に通じている。⻑野県松本市で2021年3月7日にフラワーデモ松本にて「The Clothesline」を開催、3月20日から《The Clothesline》単独としての展示も開催された。「Our Clothesline」も協力として参加をするものの、ほとんどは主催者のみで構築・開催され、『The Clothesline』に影響を受けた人が自主的に開催する好例となるだろう。
フラワーデモ松本での集合写真(2021年3月)

【関連サイト】

Our Clothesline with Mónica Mayer

https://www.ourclothesline.com/

WomEnpowered International「エル・テンデデロ・キャンペーン」

https://www.womenpoweredint.org/eltendedero

The Clothesline with mimosas

https://mimosas1002.peatix.com/?lang=ja

The Clothesline in Kariya

https://kariya.hall-info.jp/event/other/20210119.html

「The Clothesline/ Our Clothesline with Mónica Mayer」(YouTube)

https://www.youtube.com/channel/UCThHRQ20l-9569S5wpqmcTg/featured